からだを整えて、安全を感じ幸せに生きる

ポリヴェーガル理論の概要は省略しますが、人はストレス状態にあるとき、交感神経系が過活性になることによる闘争・迷走状態、または背側迷走神経系の過活性によるシャットダウン状態に陥ると考えられています。

 

この理論では主に後者のことを取り上げており、迷走神経がテーマです。

 

迷走神経は12ある脳神経のうちの1つで、多くの内臓を支配しています。

 

ポリヴェーガル理論では、迷走神経には背側と腹側の2系統があるとされており、人が安全を感じ、周囲と交流しながら幸せに生きている時は、背側は過活性化せず腹側の迷走神経が十分に機能しているそうです。

 

12の脳神経のほとんどは脳幹を通っており、脳幹への血流が十分であることが大切です。

 

脳神経の中でも、迷走神経に加え、三叉神経、顔面神経、舌咽神経、副神経が特に円滑な社会交流のためには重要とのことです。

 

副神経は首の前面の筋肉である胸鎖乳突筋と、首~肩にかけての筋肉である僧帽筋を支配していること、また、腹側迷走神経系が喉の筋肉を支配していることから、これらの神経を活性化するために効果的な、顔、首、肩の筋肉をほぐすためのエクササイズが紹介されています。

 

首の状態、特に第一頸椎と第二頸椎の位置が重要といいます。

 

大きなストレスやトラウマ状態だけでなく、過去に起きた不快な経験を思い浮かべただけでも頭蓋骨近くにあるこれらの頸椎の位置は簡単にずれてしまうそうです。

 

さて、本書に書かれているエクササイズを簡単にご紹介すると、主に2つあります。

 

1つは、首や肩を回すエクササイズで、この動きをしながら目を動かすことが特徴的です。

 

これは、眼球を動かす筋肉と後頭部の筋肉が神経的につながっていることによるのですが、私がいつも通っている神経学に詳しい整体の先生も首の不調時に目を動かすことの重要性をおっしゃっており、ブレインジムでも目を動かすエクササイズが多いことから納得がいきます。

 

首・肩の緊張がゆるみ、脳幹への血流が増えると、冷静に思考し、活動するための前頭葉への血流も改善されます。

 

頸椎の位置と姿勢が整うと、胸部が広がり、呼吸のパターンも改善されます。

 

そうやってからだは自らバランスを整える力を取り戻していくのです。

 

もう1つのエクササイズは、顔のツボ押しで、顔の表情筋を刺激して血流を促すことで、表情がよくなり他者との交流もスムーズになります。

 

ツボ押しといっても必要以上に圧をかけるのではなく、あるポイントで皮膚が動かしにくい方向を感じながら刺激することで、顔の感覚を司る三叉神経と顔の筋肉を司る顔面神経の緊張をゆるめていきます。

 

トラウマは神経系に記憶されます。大きなストレスを受けて、様々な不調に陥ることは時には避けられないかもしれません、

 

けれどもそんなときからだに少しだけアプローチするだけで、神経系に記憶されたトラウマが解放され、からだがより楽に自由に動くようになれば、他者にも心を開くことができるようになってよりよい状態に戻ることができると著者のスタンレー氏は説いています。

 

また、本書「からだのためのポリヴェーガル理論」(スタンレー・ローゼンバーグ著、春秋社)の冒頭にポリヴェーガル理論の創始者ポージェス氏の序文があり、「安全であると感じると、身体は、健康、成長、回復をサポートするために自らを再調整することができます」と書いてありました。

 

これまで私は自分がご提供するセラピー(リフレクソロジー、クラニオセイクラルセラピー、Metamorphic Technique、ブレインジム)がなぜよいのか、平坦な言葉で説明することが難しく感じていましたが、一言で言えば自分自身でバランスを取り戻すために本来持つからだの叡智を最適化するということだと思いました。

 

それは決して難しいものではなく、ただ触れて、動いてみること。

 

からだが楽になれば、心も楽になり、人生ももっと豊かになる、そんなことが言えるのだと思います。

 

このブログを通して、セラピーをもっと身近に感じていただけたらうれしいです。