脳とからだとブレインジム~中枢神経系について考える~

まず、Helenさんのセッションは、集中が難しい、不適切な行動を取るなどの発達障がいの特性を持つお子さんに関するご相談を受けた時、その子の立位の写真を撮って見せてもらうところから始まります。

 

すると、このような特性を持つ子どもたちには、頭の位置が傾いている、肩の高さが左右対称でない、腕の長さが異なる、膝頭が正面を向いていない、などのからだの構造上(筋・骨格系)の特徴がみられます。

 

・胎児期~誕生時~幼児期のストレスによる原始反射の残存や神経発達上の問題

 

・幼児期(7歳まで)に十分にからだを動かしていない

 

など様々な要因により骨格にゆがみが生じると、付着する筋肉にも影響が及び、筋肉の張りが左右対称でない(どちらかの筋肉が異常に張っている、またはゆるんでいる)という現象が起きるのです。

 

すると、脳とからだの間の神経伝達がうまくいかず、思うようにからだを動かすことができない、または外から取り入れた情報を脳で処理できない、などストレスが生じます。

 

目に見える子どもたちの様子は氷山の一角で、彼らのからだに起きているストレスを正しく理解することは難しいですが、この問題を軽減する方法の一つがブレインジムであるという信念を持ってHelenさんはこれまで活動されてきました。

 

ではなぜブレインジムが有効なのか、Helenさんが説明してくださった内容をまとめます。

 

☆中枢神経系について

 

あらゆる情報処理は、中枢神経系(脳と脊髄)で行われます。

 

具体的には、1) 視覚、2) 聴覚、3) 触覚、4) 前庭感覚、5) 自己受容感覚を司る器官からの刺激が中枢神経系で処理され、5つの感覚から得た情報は互いに影響し合っています。

 

1) 視覚:頭蓋骨、特に目の周りの骨にゆがみや動きにくさがあると、付着する筋肉の動きも制限され、左右の目の協調=両眼視が難しくなります。Helenさんによると、難産で生まれた子どもの多くに視覚の問題がみられるそうです。

 

ちなみに、目で見た内容が目で処理されるのは全体の10%未満であり、それ以外は2) 聴覚と5) 自己受容感覚からの情報を基に脳で処理されます。

 

2) 聴覚:視覚と同様に、耳で聞いた内容の大部分は脳で処理されます。聴覚はまた、話すこと、思考や記憶にも関係があります。

 

首の筋肉の5) 自己受容感覚との関係が深く、首の筋肉が凝っているとき、正しく聞くことが難しくなります。

 

3) 触覚:意外なことに、触覚からの情報は1) 視覚と2) 聴覚からの情報より優先されるそうです。触れることで、安心感が得られます。

 

そのため、特に幼児期に触れることは大事で、成長してからも触覚を刺激するような学びが有効だそうです。

 

4) 前庭感覚:平衡感覚のことで、重力に対してからだの位置=姿勢をまっすぐ保つための機能です。からだの位置を正しく把握することにより、筋肉の張りもバランスよく維持されます。

 

また、前庭感覚は、1) 視覚や2) 聴覚からの情報を正しく解釈するために重要で、学習障がいと呼ばれる現象の多くが前庭感覚の問題と関係があります。

 

5) 自己受容感覚:からだの位置を把握するための神経終末のことで、からだを動かす部位(全身の腱、関節、筋肉、内耳)にあります。

 

自己受容器で知覚した情報はまず前庭器官で処理されるため、4) 前庭感覚とも密接な関係があります。

 

また、「自己受容」という名前の通り、自分のからだ・存在を感知するのに大切な感覚です。

 

 

☆中枢神経系の伝達と脳脊髄液の流れについて

 

頭蓋骨と脊椎の中で、中枢神経系=脳と脊髄の周りをクッションのように覆って栄養を供給しているのが脳脊髄液です。

 

脳脊髄液を循環させるポンプの役割を果たしている部位が骨格で、主に大泉門(頭頂)、頸椎1番、仙骨(脊椎の基底)の3つです。

 

頭蓋骨は29個の骨から成り立ちそれぞれが独立しており、29の各骨は1分間に40回もの微細な動きをしているそうです。

 

しかし、吸引分娩など分娩時の医学的介入による骨格の歪みや、顎関節症など骨と骨の癒着により、各骨の動きが制限され、ポンプの働きが悪くなります。

 

そうすると、脳脊髄液の流れや中枢神経系の伝達の滞りが生じ、中枢神経系での情報処理に影響が及びます。

 

 

☆中枢神経系の働きを高めるためにできる3つの提案

 

1) プロによる施術

 

骨格のゆがみを矯正するカイロプラクティック、首の筋肉の凝りをほぐすマッサージ、頭蓋骨、仙骨の微細な動きを取り戻し、脳脊髄液の流れをよくするクラニオセイクラルセラピー(頭蓋仙骨療法)がおすすめです。

 

2) 日常的にからだを動かす

 

発達障がいの特性は、原始反射(胎児期・幼児期に見られる反射的動作)が残存していることが原因で起きていることも多いため、反射を統合するために幼児が自然に行っている動きを行うことが効果的です。

 

代表的な動きは「はいはい」ですが、それ以外にもブレインジムのシンプルなエクササイズ(両目を動かす、両腕を動かす、左右交差の動き)などが有効です。

 

3) 食事を見直す

 

胎児の発達段階では、組織の一部が中枢神経系として発達し、もう一部が消化器系として発達します(編集注記:どの組織を指すのか言及はありませんでした。外胚葉のことではないかと考えますが、個人的に調べたところ、外胚葉から発生するのは口腔内と肛門とのことでした)。

 

そのため、脳に存在する神経伝達物質の70%が腸にもあり、腸が第二の脳と呼ばれる所以です。

 

発達障がいの特性を持つお子さんの中には、腸の不調も見られるケースが多く、牛乳をやめるなど、食生活の見直しが有効なことがあるそうです。

 

 

☆まとめと私の感想

 

発達障がいの特性を持つお子さんには、骨格・筋肉系などのからだの構造上の問題が見られます。脳とからだの間の神経伝達がうまくいっていないため、からだのゆがみを整えるための施術やバランス感覚を養うエクササイズが有効です。

 

脳とからだに大きなストレスがかかっていることを理解し、優しい気持ちと遊びの心を持ってからだをケアし、動かしていくことが、症状改善に向けた無理のない試みになるように思いました。

 

ブレインジムのエクササイズは、遊びの要素を持ったシンプルな動きです。筋肉をゆっくり動かすことで、凝りによる緊張をほぐしていきます。

 

また、目の動き、聴覚に重要な首・肩の筋肉の動き、からだに触れることなど、エクササイズには感覚を鋭くする目的もあるほか、多くのエクササイズが左右対称の動きを大切にしており、前庭感覚、バランス感覚を自然な形で養います。

 

しかし、今回のお話は発達障がいのお子さんにだけ当てはまる内容でしょうか。

 

本日整体の先生とこの件について話し合いましたので、また後日ブログに綴っていきたいと思います。