困難な中でも、つながりを持って進んでいく

Jさんと初めてお会いしたのは5年前の2019年のこと、オーストラリアのメルボルンで来豪中のブレインジム創始者ポール・デニッソン氏の講座で偶然隣りに座ったことがきっかけで、講座中色々とサポートしてくださいました。

 

私はポールさんから直接習ったことがなかったことと、その数年前にオーストラリアでブレインジムインストラクターの資格を取得していたことから、どうしてもオーストラリアでその講座を受けたかったのです。

 

講座は「Total Core Repatterning(体幹のリパタニング)」という名前で、副題に「The postural core is the heart of the body(体幹はからだの真髄である)」とあります。

 

真髄と訳しましたが、heart=心の意味からも、そこに心が宿る本質的なもの、という意味合いで、brain=脳とも言い換えられるとテキストにメモしていました。

 

ブレインジムでは誰でもできるシンプルなエクササイズが有名ですが、実は潜在意識下の筋肉を調整するキネシオロジーがベースになっており、ブレインジムでも本格的なセッションになると筋肉の調整を行うことがあります。

 

筋肉がしっかりしている時こそ、からだを楽に自由に動かすことができ、なりたい姿、目標に向かって行動できるという考え方があるからです。

 

Repatterning(リパタニング)とは、固定化されたからだの動きの再調整という意味で、ブレインジムの初級コースでも習う内容ですが、メルボルンで習ったTotal Core Repatterningは、体幹を支える42個の筋肉すべての再調整について学ぶ本格的な講座でした。

 

今回Jさんに再会して当時のことを思い出したので、テキストを読み返してみました。

 

この講座は、原始反射が統合されなかった際に出現する、脳とからだが統合されていない状態を改善するための筋肉の再調整を目的としています。

 

原始反射とは、赤ちゃんが誕生後生きるために必要な、姿勢に関する初期の反射のことを言います。

 

生後1年の間に反射が統合または抑制されないと、その後もからだの動きが反射によって制限され、からだのバランス、手と目の協調、左右脳の統合などに影響を及ぼすと考えられています。

 

脳とからだが統合されていれば、目標に向かってより楽しい人生を送ることができますが、困難が生じる時、その背景に原始反射が統合されていないことがあるかもしれません。

 

前回のブログでご紹介したように、脳神経の1つ、迷走神経は社会でのつながりにも影響を及ぼすため、神経伝達がスムーズでないとき、幸福感や達成感が損なわれることがあるからです。

 

 

 

 

講座で扱った反射は主に3つで、いずれもセンタリング(自分の中心軸を感じること)に関係します。

 

・ATNR(非対称性緊張性頸反射:生後6-9か月に発達)

 

首を回してからだの片側を使うための反射で、統合されていないと、左右バランス(足の長さが左右で異なる)、学習(特に言語)、両眼視、感情ストレスへの対処が難しくなります。

 

・STNR(対称性緊張性頸反射:生後9-11か月に発達)

 

赤ちゃんが四つん這いになりはいはいする頃の姿勢に関する反射で、頭、首、肩、腕、上肢がそれぞれ柔軟に動くために重要です。

 

統合されていないと、姿勢が悪くなる(背中の強度が弱い)、手と目が協調しにくい、目を遠近に動かすことが難しい、じっと座って集中することが難しくなることから、ADHDと診断されることがあります。

 

・TMJ(顎関節症)

 

食いしばりが起きてしまうのは、顎、肩、腰の位置が不安定なためです。頭蓋の動きが制限され、脳への神経伝達の滞りにつながります。

 

これらの反射は通常の生活では特に問題が感じられなくても、何か特定のストレスを感じると活性化し、全身の筋肉が緊張して動かしにくくなります。

 

ストレス源は今感じているものもあれば、これから進みたいと思い描くものに対して感じることもあります。

 

この講座を受けた時私は約10年ぶりにフルタイムの仕事に戻りたいと思っていた頃で、講座の中で「新しい仕事に就く」ことを目標に何度も42筋の調整を行いました。

 

その時こわばってしまった筋肉を調整することは正直心地よいものではなく、自分がいかにこの大きな目標をストレスに感じているかがよくわかりました。

 

けれども、オーストラリアの開放的な雰囲気と、大らかで優しいベテランインストラクターの励ましのおかげで、講座が終わって帰国後就職活動に励み、数か月後に職を得ることができました。

 

一方、昨日再会したJさんは、元々はアスペルガー症候群のお子さんをお持ちだったことがきっかけでブレインジムの世界に入られ、5年前の時点では発達障がいを抱えたお子さんを対象にブレインジムのセッションを忙しく行っていらっしゃいました。

 

その1年後2020年の年頭、コロナが始まる少し前の頃、オーストラリアで大規模な山火事が発生しました。コアラが多数死亡した映像を覚えていらっしゃる方も多いことと思います。

 

その山火事でご自宅が全焼し、Jさんはオーストラリアブレインジム協会から全面的なサポートを受けられました。

 

サポートは失った教材の補助から仕事の支援にもおよび、Jさんは間もなくブレインジム協会の事務局担当に就かれました。

 

今回Jさんに再会して当時のお話をお聞きし、困難な状況から立ち直れたのはブレインジム協会の支えがあったこと、そして、すべてを失った経験から、今できることを最大限に楽しみたいと積極的に海外へ旅行されるようになられたことをお聞きしました。

 

そして、万物には陰陽があるように人生にも浮き沈みがあること、それでも支えがあれば生きていけること、困難な中にも運が良かったことを見つけることなど今まさに乳がんの治療を受けようとしている私にも励まされるお話をお聞きして嬉しく思いました。

 

今後Jさんはブレインジムのより高度な指導者を目指し、ブレインジムを広めていきたいと情熱を燃やされていました。

 

最後に、ブレインジムとは何か、以前ブレインジム協会の勉強会で再確認した内容をまとめたブログを記します。

 

 

何か困難なことがあっても、また前に進んで楽しむことができることを教えてくれたJさんに感謝して、私もこの先に進んでいきたいと思いました。